クリスマスは許される訪問者は、サンタだけと法律で決めてしまえばいいのに。
きゃいきゃいと煩く騒ぐ3人を見ながら悠太は思わず深いため息をついた。

 

 

実家を出て初めてのクリスマス。
春と付き合い始めて初めてのクリスマス。
人生初の恋人のいるクリスマス。

悠太は12月に入ってから正直浮かれていた。
イベント事の大好きな春は、玄関に小さなクリスマスツリーを飾ったり。
ドアにリースをかけたりとクリスマス気分を満喫しているようで
その空気に当てられてか、何時もよりこの冬はどこか浮かれた気分ですごしていたのだ。
しかし、不幸な事にクリスマスイブにゼミの用事が出来てしまい大学に行かなくては行けなくなってしまった。
なるべく早くに用事を済ませ足早に家に帰る。
ゼミの面子には散々からかわれたけれど気にもならなかった。
早く春に会いたい。
街中に施されたイルミネーションやそこかしこに飾られているサンタの人形。
今まで気にも留めなかった物達がキラキラと輝いて見える。
楽しい、楽しい。
なんてすばらしいクリスマス!
足取りは軽やかで軽快。
頼んでおいたケーキ屋により、クリスマスケーキを片手に家に帰る。
ふと、アパートの前を見ると見慣れたオレンジの原付が目に入った。
先ほどまでの陽気な気分は全てぶっとび背中を冷たい汗が流れる。
ダッシュで家に入ると、予想道理。
祐希と千鶴が我が物顔でこたつに入り込んでいた。
なんで?
「あ、ゆうたん。おっかえり~。」
「かえり~。」
へらっとしたしまりの無い表情で出迎えられても何も嬉しくない。
「お帰りなさい、悠太くん。」
キッチンに立っていた春がパタパタとスリッパを鳴らして近づいてくる。
うわ、可愛い。
いや、違う!
「ちょっと、春アレ何?」
「あれ?」
「祐希と千鶴。」
あぁ、と合点がいったのかにこにこしながら春が答える。
「お土産に、焼き鳥買ってきてくれたんですよ。
今日は賑やかな晩御飯になりますね。」
「いや、確かに鳥だけど。
せめてケンタッキーのチキンでしょ。
…いや、ちがう!」
思わず大声を上げてしまう。
いけない、ここのアパート壁が薄いんだ。
余り煩くしては近隣住民に迷惑である。
「悠太くん?」
春が不安そうに顔を覗き込んでくる。
「春、今日って何の日か知ってる?」
「クリスマスですよね?」
「ですよね。」
小首をかしげて答える春。
悠太が何を残念に思っているか分からないようだった。
「これ、ケーキ。」
「わぁ!ありがとうございます!」
手にしていたケーキの袋を春に渡すとにこにこと嬉しそうに受け取ってくれた。
いそいそと冷蔵庫にケーキを片付けに行く春を見送っていると
珍しくこたつ虫の祐希がこたつから出てわざわざ悠太の側によってくる。
「ほら、幸せは分け合うもんですよ。」
ケラケラとこたつに座っている千鶴が笑い出す。
腹が立ったのでとりあえず二人にチョップをお見舞いしておいた。

 

4人で暫く騒いでいると、バイト終わりの要も参加して
(要はちゃんとケンタッキーのパーティーバーレルを持ってきてくれた。
さすがすぎる。)
更に騒がしくクリスマスが過ぎていく。
初めての二人っきりのクリスマスだと浮かれていたけれど
結局は何時も道理の騒がしいクリスマスだ。
まぁ仕方がない。
春が楽しそうにしているのでもういいや、とため息をついた。

ブブブブ

携帯が震える。
メール画面を開いてみると

 

 

『明日は二人でゆっくりしましょうね。』

 

 

慌てて春を見ると、千鶴に髪をいじられて遊ばれている最中のようで。
「やだ、悠太顔にやけてる。」

 

++++++++++++++

二人っきりとか恥ずかしすぎて。

 

←back